新型コロナウイルスが流行してから、在宅勤務が増えた人も多いと思います。
そうなると気になるのが今年の夏の冷房費ではないでしょうか。
冷房費に続いて、冬の暖房費も…?と考えると頭が痛くなりますね。
そんな中、山形県が2018年に、鳥取県が2020年に
国の省エネ基準のほぼ倍となる厳しい断熱基準を打ち出し、
それに適合する省エネ住宅を推進していました。
なぜ国より厳しい基準を設けたのか、
SUUMOジャーナルの記事から抜粋してご紹介いたします。
■ヒートショックによる死亡者数が交通事故の約4倍!?
「実は山形県でヒートショックによる死亡者数の推計値は年間200名以上。
これは交通事故による死亡者数の4倍にもなります」と山形県県土整備部建築住宅課の永井智子さん。
しかも山形県といえば寒い東北地方、というイメージだが、
実は山形市や米沢市は盆地にあり、寒い地方だけれど夏は暑いという、寒暖差の大きい地域。
大きな寒暖差は、体に悪影響を与える。
「やまがた健康住宅基準」が国の基準と比べてどれくらい高いのか、比較したのが下記図だ。
出典:SUUMOジャーナル
表内の「地域区分」は市区町村単位で決められていて、
山形県の場合、地域区分は3~5に分かれているが、
「やまがた健康住宅基準」は地域区分ごとに断熱性能の高低レベルとしてI~IIIの3つを設定している。
一番低いレベルIIIでも、国の基準はもとより、
ZEH(年間の一次エネルギー消費量がゼロ以下)の基準をも上回る。
一番高いレベルIは、ZEHの約2倍という高い数値だ。
■暖房を切って寝ても翌朝室温10度を下回らない家
もともと山形県は省エネ活動に積極的で、
以前から学識経験者や県内の住宅関係者、環境や森林部門など各部署の人々から成る
「山形県省エネ木造住宅推進協議会」を設けていた。
この協議会の会長で、省エネ住宅に詳しい山形県東北芸術工科大学の三浦教授をはじめたとした
学識経験者の方々に意見をうかがいながら「HEAT20」の基準を参考に
「やまがた健康住宅基準」を定めることにしたのだという。
「HEAT20」が推奨するUA値は3つのレベルがあり、それが下記の数値だ。
一番低いレベルの「G1」の数値を見ると、
地域区分3では0.38、4なら0.46、5は0.48(いずれも単位はW/m2・k)。
そう、山形県のレベルI~IIIの基準値と同じなのだ。
出典:SUUMOジャーナル
ちなみに「HEAT20」では、「G1」レベルの家で地域区分3~5(山形県の全域が該当)の場合、
冬の最低の体感温度が概ね10度を下回らない断熱性能があるとしている。
「ヒートショックを防ぐためには、最も寒い時期でも就寝前に暖房を切り、
翌朝室温が10度を下回らないように」(永井さん)
という断熱の目的に合致した基準というわけだ。
■鳥取県は山形県よりもヒートショックの危険が高い!?
一方、同じ日本海側とはいえ山形県よりずっと西に位置する鳥取県も、
同様に国の基準より高い「HEAT20」の基準を参考に、
「とっとり健康省エネ住宅性能基準」を定めた。
出典:SUUMOジャーナル
すべての死因がヒートショックによるものかどうかまで精査するのは難しいが、
冬の心疾患や脳血管疾患といえば、ヒートショックにより引き起こされる疾患の代表格。
その数が寒冷な北海道や青森県よりずっと多いのだ。
また上記グラフをよくみれば、死亡増加率の高い県は、
意外と比較的温暖な地域がずらりと並んでいることに気づくだろう。
「ヒートショックは寒い時期に起こりやすい→だから寒くない地域はそこまで心配する必要はない」
という油断が、この結果を招いているのだと思われる。
■全館空調システムを導入しても採算が取れる家
出典:SUUMOジャーナル
「ヒートショックを防ぐためには、
廊下も含めて住宅の隅々まで同じ温度であることが必要になります。
そうなると全館空調システムは必須。
では全館空調システムの効果を高めるためには、
住宅の断熱性能がどの水準にあればいいのか、
光熱費の削減率や高気密高断熱住宅を建てるコストはいくらほどになるのか、
をシミュレーションすることから始めました」
と、鳥取県住まいまちづくり課長の遠藤淳さん。
その際に、山形県同様「HEAT20」の断熱基準を元にシミュレーションしてみたのだという。
「HEAT20」の基準を元に計算した理由は、
遠藤さんは以前から日本の基準がヨーロッパなど世界と比べ低いことに課題感を持っていて
「HEAT20」の基準が欧米で義務化されている水準であることからだそうだ。
シミュレーションの結果
「初期投資があまり高くなりすぎず、全館空調の効果を高める断熱性能の基準が
UA値0.48であることがわかりました。
UA値0.48は「HEAT20」の基準で地域区分が5のG1に相当します。
鳥取県はほとんどが地域区分6ですが、
県全体の共通基準としてシンプルに示すため地域区分5のUA値を採用しました」。
それが上記表の「とっとり健康省エネ住宅性能基準」の「T-G1」にあたり、
国の基準値で建てた場合と比べると、
光熱費を約30%削減できるというシミュレーションの結果となった。
さらに断熱性能の高い「T-G2」や「T-G3」であれば、それぞれ約50%、約70%の削減に繋がる。
「T-G2なら15年で初期費用の増額分を回収できるくらいの光熱費削減効果があります」と槇原さんはいう。
山形県と鳥取県のように、国の省エネ基準よりも高めた家づくりを目指し、
お客様には健康的に過ごしていただきたいですね。
元記事の全貌は以下のリンクよりご覧いただけます。
出典:SUUMOジャーナル